・・・が、やがて、大便を催したので、今度は御坊主黒木閑斎をつれて、湯呑み所際の厠へはいって、用を足した。さて、厠を出て、うすぐらい手水所で手を洗っていると突然後から、誰とも知れず、声をかけて、斬りつけたものがある。驚いて、振り返ると、その拍子にま・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・栗本は、出された甲のすべっこい、小さい手を最大限度に力を入れて握ったと見せるために、息の根を止め、大便が出る位いきばった。その実、出来るだけ力を入れんようにして。「傷はまだ痛いか。」「はい。」「よしッ!」 軍医は出て行くよう・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・と呟きながら、大便を汲んで掘り返した土の上に振りかけた。「これで菜物がよう出来るぞ!」「御精が出ますねェ。」園子は二階から下りて来て愛嬌を云った。「へえェ。」じいさんは田舎の旦那に云うような調子だった。「何かお植えになります・・・ 黒島伝治 「老夫婦」
出典:青空文庫