・・・や成金やお大名の座敷の床の間を飾るには不向きであるが、悪紙悪墨の中に燦めく奔放無礙の稀有の健腕が金屏風や錦襴表装のピカピカ光った画を睥睨威圧するは、丁度墨染の麻の衣の禅匠が役者のような緋の衣の坊さんを大喝して三十棒を啗わすようなものである。・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・ すると鴎外は大喝して、「モウ十二時とは何だ、マダ十二時とナゼいわん、」と叱りつけた。私は気の毒になって徐に起ち掛けようとすると、「マダ早いよ、僕の処は夜るが昼だからね。眠くなったらソコの押入から夜具を引摺出してゴロ寝をするさ。賀古なぞ・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・然るに門人中坐容を崩すものがあったのを見て、大喝して叱した。遊所に足を容るることをば嫌わず、物に拘らぬ人で、その中に謹厳な処があった。」 森鴎外 「細木香以」
出典:青空文庫