・・・けれどもおまえたちは名高いヴェーッサンタラ大王のはなしを知っているだろう。ヴェーッサンタラ大王は檀波羅蜜の行と云ってほしいと云われるものは何でもやった。宝石でも着物でも喰べ物でもそのほか家でもけらいでも何でもみんな乞われるままに施された。そ・・・ 宮沢賢治 「学者アラムハラドの見た着物」
・・・おれは柏の木大王のお客さまになって来ているんだ。おもしろいものを見せてやるぞ。」 画かきはにわかにまじめになって、赤だの白だのぐちゃぐちゃついた汚ない絵の具箱をかついで、さっさと林の中にはいりました。そこで清作も、鍬をもたないで手がひま・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
印度のガンジス河はあるとき、水が増して烈しく流されていました。それを見ている沢山の群集の中に尊いアショウカ大王も立たれました。大王はけらいに向って「誰かこの大河の水をさかさまにながれさせることのできるものがあるか」と・・・ 宮沢賢治 「手紙 二」
・・・王子は四歳まで育って、母后の兄である祇園精舎の聖人の手に渡り、七歳の時大王の前に連れ出されて、一切の経過を明らかにした。大王は即日太子に位を譲った。新王は十五歳の時に、大王と聖人とを伴なって、女人の恐ろしい国を避け、飛車で日本国の熊野に飛ん・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫