・・・ 牙の六つある大白象の背に騎して、兜率天よりして雲を下って、白衣の夫人の寝姿の夢まくらに立たせたまう一枚のと、一面やや大なる額に、かの藍毘尼園中、池に青色の蓮華の開く処。無憂樹の花、色香鮮麗にして、夫人が無憂の花にかざしたる右の手のその・・・ 泉鏡花 「夫人利生記」
・・・醍醐の入江の口を出る時彦岳嵐身にしみ、顧みれば大白の光漣に砕け、こなたには大入島の火影早きらめきそめぬ。静かに櫓こぐ翁の影黒く水に映れり。舳軽く浮かべば舟底たたく水音、あわれ何をか囁く。人の眠催す様なるこの水音を源叔父は聞くともなく聞きてさ・・・ 国木田独歩 「源おじ」
・・・時ひとり大白法たる法華経を留めて「閻浮提に広宣流布して断絶せしむることなし」と録されてある。また、「後の五百歳濁悪世の中に於て、是の経典を受持することあらば、我当に守護して、その衰患を除き、安穏なることを得しめん」とも録されてある。 今・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
出典:青空文庫