・・・ 大石千代子さんは、ブラジルに十年の余も暮し、南洋にも暮し、書きたい題材はいっぱいあって苦しいくらいだという状態で、『山に生きる人々』という作品集を大陸開拓文芸懇話会の選書で出版していられる。 大石氏の題材は多く日本からの移民の生活・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・苔を被ぶりたる大石乱立したる間を、水は潜りぬけて流れおつ。足いと長き蜘蛛、ぬれたる巌の間をわたれり、日暮るる頃まで岩に腰かけて休い、携えたりし文など読む。夕餉の時老女あり菊の葉、茄子など油にてあげたるをもてきぬ。鯉、いわなと共にそえものとす・・・ 森鴎外 「みちの記」
・・・浜田耕作氏によると、大阪城大手門入り口の大石の一は横三十五尺七寸高さ十七尺五寸に達し、その他これに伯仲するものが少なくない。かりにこの石の厚さを八尺とし、一立方尺の石の重さを十九貫四百匁とすれば、この石の重さは約十万貫、三七五ト・・・ 和辻哲郎 「城」
出典:青空文庫