・・・ 日蓮はこの論旨を、いちいち諸経を引いて論証しつつ、清澄山の南面堂で、師僧、地頭、両親、法友ならびに大衆の面前で憶するところなく闡説し、「念仏無間。禅天魔。真言亡国。律国賊。既成の諸宗はことごとく堕地獄の因縁である」と宣言した。・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・ハリコフでの国際革命作家拡大プレナムの決議は日本のプロレタリア文学運動が、シッカリと大衆の中に根を張り、国際的な連関において前進して行くために、もっとも重要な、さしあたって第一番に議題として我々が討議し、具体化しなければならない幾多の貴重な・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・ 三、反戦文学の恒常性 一 戦争反対の思想、感情を組織して、労働者農民大衆に働きかける文学は、戦争が行われている時にのみ必要であるか。戦争が起っていない平和な時期に於ては、戦争反対文学は必要ではないか?・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・だから、右の諸作家の筆になるものを見ても、日清戦争がどういう風に戦われたか、如何なる戦争であったか、その戦場の迫真力のある描写の一つも、また戦時に於ける国内大衆の生活がどうであったかをも知ることが出来ない。多くの作者は、その戯作者気質と、幇・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・山中の庵へ米苞が連続して空中を飛んで行ってしまったり、紫宸殿を御手製地震でゆらゆらとさせて月卿雲客を驚かしたりなんどしたというのは活動写真映画として実に面白いが、元亨釈書などに出て来る景気の好い訳は、大衆文芸ではない大衆宗教で、ハハア、面白・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
「モップル」が、「班」組織によって、地域別に工場の中に直接に根を下し、大衆的基礎の上にその拡大強化をはかっている。 ××地区の第××班では、その班会を開くたびに、一人二人とメンバーが殖えて行った。新しいメンバーがはいって・・・ 小林多喜二 「疵」
・・・すると、直ぐ家へやって来てこんなに大衆的にやられている時に、遺族のものたちをバラ/\にして置いては悪いと云うので、即刻何処かの家を借りて、皆が集まり、お茶でも飲みながらお互いに元気をつけ合ったり、親密な気持を取り交わしたり、これからの連絡や・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・そのような夜半には、私もまた、菊池寛のところへ手紙を出そうか、サンデー毎日の三千円大衆文芸へ応募しようか、何とぞして芥川賞をもらいたいものだ、などと思いを千々にくだいてみるのであるが、夜のしらじらと明け放れると共に、そのような努力が、何故と・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・こんど徳川家康と一つ取っ組んでみようと思う、なんて大それた事を言っていた大衆作家もあったようだが、何を言っているのだ、どだい取組みにも何もなりやしない、身のほどを知れ、身のほどを、死ぬまで駄目さ、きまっているんだ、よく覚えて置け、と兄の口真・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・ なお、その老人に茶坊主の如く阿諛追従して、まったく左様でゴゼエマス、大衆小説みたいですね、と言っている卑しく痩せた俗物作家、これは論外。 四 或る雑誌の座談会の速記録を読んでいたら、志賀直哉というのが、妙に・・・ 太宰治 「如是我聞」
出典:青空文庫