・・・この原稿はほんの大要を書き止めて置いたのだから読んだってわからないからねエ。』 夢からさめたような目つきをして大津は目を秋山の方に転じた。『詳しく話して聞かされるならなおのことさ。』と秋山が大津の目を見ると、大津の目は少し涙にう・・・ 国木田独歩 「忘れえぬ人々」
・・・は、先ず大要以上のごときもののようである。 また一方、研究者の内面生活の方面から見た「自由」はどうかと見ると、これは全く個人個人の問題で、一概に云われないようである。ちょっと外側から見ると恐ろしく窮屈そうに見えるような天地に居て、そうし・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・その実験は未了でその結果は未成品に過ぎないが、それにもかかわらずその大要をしるしてみたいと思うのである。 実験を始める前に私はまず自分の過去の経験を捜してみた。 いつだったか、印刷工がストライキをやって東京じゅうの新聞が休んだ事があ・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・ 根岸派の新俳句が流行し始めたのは丁度その時分の事で、わたくしは『日本』新聞に連載せられた子規の『俳諧大要』の切抜を帳面に張り込み、幾度となくこれを読み返して俳句を学んだ。 漢詩の作法は最初父に就いて学んだ。それから父の手紙を持って・・・ 永井荷風 「十六、七のころ」
・・・これより朝日新聞社員として、筆を執って読者に見えんとする余が入社の辞に次いで、余の文芸に関する所信の大要を述べて、余の立脚地と抱負とを明かにするは、社員たる余の天下公衆に対する義務だろうと信ずる。 私はまだ演説ということをあまり・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・その義は諸書に記して多き中について、我が国普通の書を『女大学』と称し、女教の大要を陳べたるものなるが、書中往々不都合にして解すべからざるものなきにあらず。例えば女子の天性を男子よりも劣るものと認め、女は陰性なり、陰は暗しなど、漠然たる精神論・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・もし佐橋甚五郎が事に就いて異説を知っている人があるなら、その出典と事蹟の大要とを書いて著者の許に投寄してもらいたい。大正二年三月記。 森鴎外 「佐橋甚五郎」
出典:青空文庫