本年の建国祭を期して文化勲章というものが制定された。これは人も知る如く日本で始めてのことである。早速絵では竹内栖鳳や横山大観がその文化勲章を授与され、科学方面でも本多博士その他が比較的困難なく選ばれた。文学の分野に於ては、・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・百万円をかけて、日本文化大観を編纂するのもよいであろう。しかしこの事業内容が発表された時、先日来、山川菊栄女史によって発表されていた現代日本の女学生気質についての批判をおのずから思いおこした人が、決してすくなくなかったであろうと思う。 ・・・ 宮本百合子 「世界一もいろいろ」
・・・法隆寺の壁画を思いだします。大観の絵と違った世界があることを感じます。この課題が日本画家たちによって、どう解かれてゆくでしょうか。 内田巖さんのお母さんを描かれた二枚の肖像、永井潔さんの蔵原さんの肖像と男の像、なにか印象にのこります・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・ 茶料理で有名であり、河童忌や大観の落書きで知られた天然自笑軒が出来たのは、大正のことで、女中が提灯を下げて送って出るその門は、同じ田端でもずっと渡辺町よりにあった。 漱石は、本郷の千駄木町に住んでいたので初期の作品にはどれもよく団・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・この寺は、建物も大観門から青蓮堂――観音廟を見たところ、同じ辺から護法堂へ行く窟門の眺めなど、趣き深い。永山氏の紹介で、現住三浦氏が各建物を案内し大方丈の戸にある沈南蘋の絵を見せて呉られた。護法堂の布袋、囲りに唐児が遊れて居る巨大な金色の布・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・門前で俥を下り、高い石段を登りつめて甃の道を左に数歩行くと、大観門から左右に廻廊のある青蓮堂が眺められる。黒い甃と朱の建物が、明るい細雨に濡れて一種の美しさを漂わせていた。私共は大庫裡の森とした土間に立って案内を乞うた。二声三声呼ぶと、こと・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・ 五来素川氏の大観に出された「社会革命の将来と国民の覚悟」を読む。失望に近い程度に於て雑駁なものだ。なかに、 仏国の「瑠璃の浜辺」にある辟寒地で、二万人を入れるカジノの中に、世界の遊民が、一杯の珈琲に安閑として居るのを見て、アリ・・・ 宮本百合子 「無題(二)」
・・・その後二十年くらいたって、奈良の飛鳥園が撮影しに行き、『雲岡石窟大観』という写真集を出した。水野精一君たちの精密な実地踏査が始まったのもそのころで、その成果『雲岡石窟』十五巻の刊行が終わったのは、つい数年前のことである。これで雲岡遣蹟の紹介・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫