・・・これを指しては、背低の大隊長殿が占領々々と叫いた通り、此処を占領したのであってみれば、これは敗北したのではない。それなら何故俺の始末をしなかったろう? 此処は明放しの濶とした処、見えぬことはない筈。それに此処でこうして転がっているのは俺ばか・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・ 五 吉永の中隊は、大隊から分れて、イイシへ守備に行くことになった。 HとSとの間に、かなり広汎な区域に亘って、森林地帯があった。そこには山があり、大きな谷があった。森林の中を貫いて、河が流ていた。そのあたりの地理は・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・顔を出したのは大隊副官と、綿入れの外套に毛の襟巻をした新聞特派員だった。「寒い満洲でも、兵タイは、こういう温い部屋に起居して居るんで……」「はア、なる程。」特派員は、副官の説明に同意するよりさきに、部屋の内部の見なれぬ不潔さにヘキエ・・・ 黒島伝治 「前哨」
・・・しかし、大隊の炊事場では、準備にかえろうともせず、四五人の兵卒が、自分の思うままのことを話しあっていた。そこには豚の脂肪や、キャベツや、焦げたパン、腐敗した漬物の臭いなどが、まざり合って、充満していた。そこで働いている炊事当番の皮膚の中へま・・・ 黒島伝治 「橇」
・・・ 大隊長とその附近にいた将校達は、丘の上に立ちながら、カーキ色の軍服を着け、同じ色の軍帽をかむった兵士の一団と、垢に黒くなった百姓服を着け、縁のない頭巾をかむった男や、薄いキャラコの平常着を纏った女や、短衣をつけた子供、無帽の老人の・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・そして、こゝから又セミヤノフカへ一個大隊分遺される、兵士が足らなくて困っている、それに関する訓令を持って来た、と云った。一個大隊分遣される、それゃ、内地へ帰る傷病者の知ったことじゃない。が、田口のなんか事ありげな気配で栗本は直ぐ不安にされた・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・出動部隊は近衛師団、第一師団のほか、地方の七こ師団以下合計九こ師団の歩兵聯隊にくわえて、騎兵、重砲兵、鉄道等の各聯隊、飛行隊の外、ほとんど全国の工兵大隊とで、総員五万一千、馬匹一万頭。それが全警備区に配分されて、配給や救護や、道路、橋の修理・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・その時お目にかかって、弔みを云って下さったのが、先ず連隊長、大隊長、中隊長、小隊長と、こう皆さんが夫々叮嚀な御挨拶をなすって下さる。それで×××の△△連隊から河までが十八町、そこから河向一里のあいだのお見送りが、隊の規則になっておるんでござ・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・「空の工兵大隊だ。どうだ、鱒やなんかがまるでこんなになってはねあげられたねえ。僕こんな愉快な旅はしたことない。いいねえ。」「あの鱒なら近くで見たらこれくらいあるねえ、たくさんさかな居るんだな、この水の中に。」「小さなお魚もいるん・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・新しいソヴェトがどんないい工場を持ってるか、集団農場、国営農場はどんなにやっているか、都会の工場からの代表が一大隊繰り出すのにもよく出逢う。 父親や兄が職場からそうして珍らしいところを見学しながら休む時、子供連は、ではどうしてるか?・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の夏休み」
出典:青空文庫