・・・ 甚太夫は喜三郎の話を聞きながら、天運の到来を祝すと共に、今まで兵衛の寺詣でに気づかなかった事を口惜しく思った。「もう八日経てば、大檀那様の御命日でございます。御命日に敵が打てますのも、何かの因縁でございましょう。」――喜三郎はこう云っ・・・ 芥川竜之介 「或敵打の話」
・・・勿論天運を除外例としても。 天国の民 天国の民は何よりも先に胃袋や生殖器を持っていない筈である。 或仕合せ者 彼は誰よりも単純だった。 自己嫌悪 最も著しい自己嫌悪の徴候はあらゆる・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・児を棄てる日になりゃア金の茶釜も出て来るてえのが天運だ、大丈夫、銭が無くって滅入ってしまうような伯父さんじゃあねえわ。「じゃあ何かいい見込でも立ってるのかエ。「ナアニ、ちっとも立ってねえのヨ。「どうしたらそういい気になっていられ・・・ 幸田露伴 「貧乏」
出典:青空文庫