・・・ と、茶碗が、また、赤絵だったので、思わず失言を詫びつつ、準藤原女史に介添してお掛け申す……羽織を取入れたが、窓あかりに、「これは、大分うらに青苔がついた。悪いなあ。たたんで持つか。」 と、持ったのに、それにお米が手を添えて、・・・ 泉鏡花 「縷紅新草」
・・・本員の失言でした」「まア」「あはは……。僕いま、親父の出している変てこな雑誌の編集を手伝っていて、実は音楽どころじゃないんです」と、白崎はまたまずいことを言いだしたが、しかし、あわてて、「――でも、切符送って下されば、どんなに忙・・・ 織田作之助 「昨日・今日・明日」
・・・たいへんの失言でございました。取消させていただきます。幸福クラブ、誕生の第一の夕、しかし最初の話手が陰惨酷烈、とうてい正視できぬある種の生活断面を、ちらとでもお目にかけたとあっては、重大の問題、ゆゆしき責任を感じます。ありがたいことには、神・・・ 太宰治 「喝采」
・・・もちろんこの場合にも文化材である用紙割当の公正と民主性がいわれているが、主務大臣の野溝はいちはやく利害関係のある地方新聞に対して、いまにいくらでも紙はまわしてやる、と失言して、問題をおこしている。用紙割当がこのような保守と利慾の権力で官僚統・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 言論・出版の自由は、世界の公約であるけれども、日本には用紙割当事務庁というところが新設されて、主務大臣の野溝は、もう地方新聞に紙はいまにいくらでもまわしてやると失言した。人民の公器であるラジオの民主化がいわれているうちに、政府は全く官・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・そうして予をしてかつて無礼にも諸君に末流の称を献じた失言を謝せしめて下さい。鴎外は甘んじて死んだ。予は決して鴎外の敵たる故を以て諸君を嫉むものではない。明治三十三年一月於小倉稿。 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
出典:青空文庫