・・・ 市ケ谷の刑事既決女囚は、昔、風呂に入って体を洗うのに、ソーダのとかし水を使わされていた。それが洗濯石鹸になった。同志丹野その他の前衛が入れられてから、そういう人々は、人間の体を洗うに洗濯石鹸という法があるかと、自分達の使う石鹸を風呂場・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・百合子が市ヶ谷の女囚の面会所で家のものに会うたびに、あっちは大丈夫かしら。ちゃんとしている? ときいたとき、百合子のきいた返事は、いつも、ええ大丈夫。御安心なさい。ちゃんとしていてよ、という返事と笑顔だった。 しかし現実では、顕治は不如・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・けれども、女囚の生活、獄中生活が女性に及ぼす精神的の影響等は余り一般に知られていない。例えば免囚保護という言葉に、はっきり女性の免囚も含有す、という意識があるか。 従来、女と云えば誰人かの娘、妻、姉妹、という附属的地位にあった。女性が刑・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・として女囚の座談会がのっていた。そこには、三つの事件で犯罪にとわれた三人の女のひとの話がある。どれ一つとってみても、日本の民主化と云われている社会現実の上に、幾重にも折りたたまっている封建の野蛮と無智がおそろしく身に迫る事件ばかりだが、なか・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・ 積極的に見れば、女性の労働、女囚取扱法、婦人陪審官制度の問題に関し、又は、幼児保護法、授産院その他、我国には恥しい程貧弱な社会事業も、内部から働らきかける真剣な力さえあれば、決して今のまま不活溌な状態にとどまっていることはないでしょう・・・ 宮本百合子 「法律的独立人格の承認」
出典:青空文庫