・・・この男は著作をするときも、子供が好きな遊びをするような心持になっている。それは苦しい処がないという意味ではない。どんな sport をしたって、障礙を凌ぐことはある。また芸術が笑談でないことを知らないのでもない。自分が手に持っている道具も、・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・「それでもお前のお蔭でみやいせ、蒲団三枚も損したわ。あの蒲団かて手織やが、まだそんねに着やせんのやぞ。お前ら碌なことしやせんのや。」「好きで誰が連れて来る!」と息子は強く云った。お霜は何ぜ息子が怒り出したのかを疑いながら、「お前・・・ 横光利一 「南北」
・・・「大好きです。」 なぜ夜海水浴をするのか問おうかと思ったが止めた。多分昼間は隙がないのだろう。「冬になるとお前さんどこへ行くかね。コッペンハアゲンだろうね。」「いいえ。ここにいます。」「ここにいるのだって。この別荘造りの・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・メエテルリンクは好きですけれど、少しぼんやりしているようですね。――私の試みは失敗でした。何を言ってもサルドゥやピネロを演らなければならないのですもの。いつか若い美しい火のような焔のような女が来て私の夢みていたことをやってくれるでしょう・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫