・・・ かつまた蟹の仇打ちはいわゆる識者の間にも、一向好評を博さなかった。大学教授某博士は倫理学上の見地から、蟹の猿を殺したのは復讐の意志に出たものである、復讐は善と称し難いと云った。それから社会主義の某首領は蟹は柿とか握り飯とか云う私有財産・・・ 芥川竜之介 「猿蟹合戦」
・・・それは世のジャーナリストたちに屡々好評を以て迎えられ、動きのないこと、その努力、それについては不感症では無かろうかと思われる程、盲目である。 重ねて言う。井伏さんは旅の名人である。目立たない旅をする。旅の服装も、お粗末である。 いつ・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・第一『浮雲』から御話するが、あの作は公平に見て多少好評であったに係らず、私は非常に卑下していた。今でも無い如く、其当時も自信というものが少しも無かった。然るに一方には正直という理想がある。芸術に対する尊敬心もある。この卑下、正直、芸術尊敬の・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・一般に好評であるのは当然である。けれども、この次の作品に期待される発展のために希望するところが全くない訳ではない。 溝口健二は、「愛怨峡」において非常に生活的な雰囲気に重点をおいている。従って、部分部分の雰囲気は画面に濃く、且つ豊富なの・・・ 宮本百合子 「「愛怨峡」における映画的表現の問題」
・・・でジャンヌ・ダークを演じたりして好評をえている。 エリカ・マンには、女性にめずらしい特長があり、疲れを知らない行動力、強靭な運動神経がある。ヘンリー・フォードが催したヨーロッパ早まわり競争に参加して、十日間に六千マイルを突破して一等にな・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・をのせて大好評であった。一九三一年に「ナップ」は、数人の作家に課題小説をわりあてた。農民小説は誰、労働者小説は誰、という風に。そして、作者はソヴェト同盟の生活をどっさり紹介しているからソヴェト小説を、とうけもたされた。『改造』に半年ほど連載・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・お祖母さんがそのものわかりよさで、好評を得ているようである。それもわかると思う。云わばこの太った白髪のお祖母さんとババだけが、こんがらかりの中で正気な心持でいる人たちなのであるから。イレーネが気ちがいじみた程の様子でコルベット卿にこの家から・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・ ずっと昔、リリアン・ギッシュが主演して大好評であった「ブロークン・ブラッサム」という映画があった。日本のタイトルは何という名であったろうか。それなどは、リリアン・ギッシュの持味として演技の落付き、重々しい美はあったがシナリオ全体として・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・という現代諷刺喜劇が上演されて、好評を博した。なかに新聞記者が記事作成の上に加えられる不便をかこった科白がある。日独協定のことについて、書かれるべき感想は更に多くあるのであろうが、お定の記事が、一等国の大新聞社会欄をあれほどの場面で占め得る・・・ 宮本百合子 「暮の街」
・・・などが出版紹介され、好評を博した。 五ヵ年計画によって、生産労働者の自発性がたかまって来るにつれて彼等の文化的水準もメキメキ盛りあがって来た。「ソヴェトのプロレタリアートは、もう芸術の消費者ではない。生産者となった」一九三〇年の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫