・・・耶蘇の方でむずかしい、予言者とか何とか申しますとのこと、やっぱり活如来様が千年のあとまでお見通しで、あれはああ、これはこうと御存じでいらっしゃるといったようなものでございますとさ。」 真顔で言うのを聞きながら、判事は二ツばかり握拳を横に・・・ 泉鏡花 「政談十二社」
・・・ 氷見鯖の塩味、放生津鱈の善悪、糸魚川の流れ塩梅、五智の如来へ海豚が参詣を致しまする様子、その鳴声、もそっと遠くは、越後の八百八後家の因縁でも、信濃川の橋の間数でも、何でも存じておりますから、はははは。」 と片肌脱、身も軽いが、口も・・・ 泉鏡花 「湯女の魂」
・・・願はくは如来の真実義を解かん。とあるのはこの心である。「あいがたき法」「あいがたき師」という敬虔の心をもっと現代の読書青年は持たねばならぬのである。 街頭狗肉を売るところの知的商人、いつわりの説教師たちを輩出せしめる現代ジャーナ・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・ ある大きな本家では、いつも旧の八月のはじめに、如来さまのおまつりで分家の子供らをよぶのでしたが、ある年その一人の子が、はしかにかかってやすんでいました。「如来さんの祭りへ行きたい。如来さんの祭りへ行きたい」と、その子は寝ていて、毎・・・ 宮沢賢治 「ざしき童子のはなし」
・・・唯願うらくはかの如来大慈大悲我が小願の中に於て大神力を現じ給い妄言綺語の淤泥を化して光明顕色の浄瑠璃となし、浮華の中より清浄の青蓮華を開かしめ給わんことを。至心欲願、南無仏南無仏南無仏。 爾の時に疾翔大力、爾迦夷に告げて曰く、諦に聴け諦・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・これその演説中数多如来正にょらいしょうへんちに対してあるべからざる言辞を弄したるによって明らかである。特にその最後の言を見よ、地下の釈迦も定めし迷惑であろうと、これ何たる言であるか、何人か如来を信ずるものにしてこれを地下にありというものあり・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫