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・・・ 昔、彼が、破産した男の土地を、値切り倒して面白がって買ったように、今度は、若いほかの男が、彼の土地を嬲るように値切りとばした。二束三文だった。 親爺は、もう、親爺としての一生は、失敗であり、無意義であり、朴訥と、遅鈍と、阿呆の歴史・・・
黒島伝治
「浮動する地価」
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・・・ そして、嬲るように脛を竹刀で、あっち側こっち側と、間をおいてぶった。「宮本がもうすっかり自白しているんだ。自分が読ましていたことさえ承認したら女のことでもあるし、早く帰してやって貰いたいと云っているんだ」 侮蔑と憤りとで自分は・・・
宮本百合子
「刻々」