-
・・・或る時尋ねると、極細い真書きで精々と写し物をしているので、何を写しているかと訊くと、その頃地学雑誌に連掲中の「鉱物字彙」であった。ソンナものを写すのは馬鹿馬鹿しい、近日丸善から出版されるというと、そうか、イイ事を聞いた、無駄骨折をせずとも済・・・
内田魯庵
「鴎外博士の追憶」
-
・・・しかれども百年後の今日に至りこの語を襲用するもの続々として出でんか、蕪村の造語はついに字彙中の一隅を占むるの時あらんも測りがたし。英雄の事業時にかくのごときものあり。 蕪村は古文法など知らざりけん、よし知りたりともそれにかかわらざりけん・・・
正岡子規
「俳人蕪村」