・・・……こんな時鉄砲は強うございますよ、ガチリ、実弾をこめました。……旧主人の後室様がお跣足でございますから、石松も素跣足。街道を突っ切って韮、辣薤、葱畑を、さっさっと、化けものを見届けるのじゃ、静かにということで、婆が出て来ました納戸口から入・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・銃も、背嚢も、実弾の這入っている弾薬盒も浦潮まで持って行くだけであとは必要がなくなるのだ。とうとう本当にいのちを拾ったのだ。 外は、砂のような雪が斜にさら/\とんでいた。日曜日に働かなければならない不服を、のどの奥へ呑み下して、看護卒は・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・虹吉が満足したのは、彼の本能的な実弾射撃が、てき面に、一番手ッ取り早く、功を奏したからである。 朝五時から、十二時まで、四人の親子は、無神経な動物のように野良で働きつゞけた。働くということ以外には、何も考えなかった。精米所の汽笛で、やっ・・・ 黒島伝治 「浮動する地価」
・・・「おい、兎をうつのに実弾を使ってもいゝのかい。」 小村も、吉田がするように、防寒具を着けながら、危ぶんだ。「かまうもんか!」「ブが怒りゃせんかしら……」 銃と実弾とは病院にも配給されていたが、それは、非常時以外には使うこ・・・ 黒島伝治 「雪のシベリア」
出典:青空文庫