・・・その衝動の醇化が実現された場合のみが芸術の萌芽となりうるのだ。しからば現在においてどうすればその衝動は醇化されうるであろうか。知識階級の人が長く養われたブルジョア文化教養をもって、その境界に到達することができるであろうか。これを私は深く疑問・・・ 有島武郎 「想片」
・・・もし社会主義の思想が真理であったとしても、もし実行という視角からのみ論ずるならば、その思想の実現に先だって、多くの中間的施設が無数に行なわれねばならぬ。いわゆる社会政策と称せられる施設、温情主義、妥協主義の実施などはすべてそれである。これら・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・芸術即生活は椿岳に由て真に実現されたので、椿岳の全生活は放胆自由な椿岳の画そのままの全芸術であった。それ故に椿岳の画を見るには先ずその生活を知らねばならないので、その生活を知って然る後に初めてその画の真趣を理解する事が出来る。椿岳の画の妙味・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・鴎外の賛成を得て話は着々進行しそうであったが、好書家ナンテものは蒐集には極めて熱心であっても、展覧会ナゾは気紛れに思立っても皆ブショウだからその計画も捗取らないでとうとう実現されなかった。(この咄については『明星』掲載当時或る知人から誤解で・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・そんな事とは知らないから前に命ぜられた社員は着々進行して率ざ実現しようとなると、「アレはやめにした、」とケロリと冷ました顔をしている。自分ばかりが呆気に取られるだけなら我慢もなるが、社外の人に手数を掛けたり多少の骨折をさせたりした事をお関い・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・天国への招待。十四章十五節―二十四節。天国実現の状況。十七章二十節―三十七節。財貨委託の比喩。十九章十一節―二十七節。復活者の状態。二十章三十四節―三十八節。エルサレムと世界の最後。終末に関する大説教である、二十一章七節・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・彼は理想を実現するの術を知っておりました。かかる軍人をわれわれはときどき欧米の軍人のなかに見るのであります。軍人といえば人を殺すの術にのみ長じている者であるとの思想は外国においては一般に行われておらないのであります。 ユトランドはデンマ・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・そして、積極的に彼等がいかなる、境遇に置かれつゝあるかと認識することによって、その中の可能なるものより、速かに実現されんことを希うのである。 小川未明 「児童の解放擁護」
・・・という言葉は詩的に、センチメンタルに聞えるかも知れないが、民衆の利福を祈念するために、より正しい生活を人間の正義感に訴えて、地上に実現せしめんとする目的は、一片の空想的事実ではないのであります。 芸術に対しては、いろいろの見解が下される・・・ 小川未明 「自分を鞭打つ感激より」
・・・同じような状態は、永久に決して二たび実現するものではないけれど、其れと同じような、また相似た幸福な生活はなされないとは言われないからであります。 知識は、其れがためにのみ必要なのである。また、努力と信念とは其れをなさんがためにのみ必要な・・・ 小川未明 「草木の暗示から」
出典:青空文庫