・・・もう少し行くと路地の角の塀に掛けた居住者姓名札の中に「寒川陽光」とあるのが突然眼についた。そのすぐ向う側に寒川氏の家があって、その隣が子規庵である。表札を見ると間違いはないのであるが、どういうものか三十年前の記憶とだいぶちがうような気がする・・・ 寺田寅彦 「子規自筆の根岸地図」
・・・ 高浜、坂本、寒川諸氏と先生と自分とで神田連雀町の鶏肉屋へ昼飯を食いに行った時、須田町へんを歩きながら寒川氏が話した、ある変わり者の新聞記者の身投げの場面がやはり「猫」の一節に寒月君の行跡の一つとして現われているのである。 上野の音・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・十二月の作品も寒川光太郎氏「嶺」半田義之氏「はずみ」野口富士男氏「河からの風」いずれも大別すれば系譜的な作品と云える性質をもっている。 今年特に系譜的な作品が多く現れたということは、現代の社会のどんな文学への現れなのだろう。 作年は・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
出典:青空文庫