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・・・一太の家は、千住から小菅の方へ行く街道沿いで、繩暖簾の飯屋の横丁を入った処にあった。その横丁は雨っぷりのとき、番傘を真直さしては入れない程狭かった。奥に、トタン屋根の長屋が五棟並んでいて一太のは三列目の一番端れであった。どの家だってごく狭い・・・
宮本百合子
「一太と母」
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・・・そして、六日午前五時すぎ、小菅刑務所のわきの五反野南町のガード下で、無残な轢死体としての下山総裁が発見された。 日本じゅうに非常なセンセーションがまきおこった。五日の午前九時すぎ下山総裁が三越で自動車をのりすててから死体となって発見され・・・
宮本百合子
「「推理小説」」