・・・はじめとする雲上人、大臣、大将、代議士たちなどが、戦争となると、いつも離れて生活しているだけに、一層効果的な好奇心・感動をもって人民にこまごまとふれはじめた。「一匹の軍馬よりもやすい兵卒の命」は雀躍して皇国に殉じることを名誉と感じて疑わない・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・こういう現実に即してみたとき、もし産制の運動者が今日のアメリカにおける変化をただ自分たちに自覚されている善意と努力の側からだけで評価して雀躍するなら、計らずも彼らのよろこびの声は本質的にまことに非人間的な声への合唱となるのである。私たちに生・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
・・・ 然るところ去承応二年六丸殿は未だ十一歳におわしながら、越中守に御成り遊ばされ、御名告も綱利と賜わり、上様の御覚目出たき由消息有之、かげながら雀躍候事に候。 最早某が心に懸かり候事毫末も無之、ただただ老病にて相果て候が残念に有之、今・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
・・・この体に旅人も首を傾けて見ていたが、やがて年を取ッた方がしずかに幕を取り上げて紋どころをよく見るとこれは実に間違いなく足利の物なので思わずも雀躍した,「見なされ。これは足利の定紋じゃ。はて心地よいわ」と言われて若いのもうなずいて、「・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・彼らの憎悪と怨恨と反逆とは、征服者の予想を以て雀躍する。軈て自由と平等とはその名の如く美しく咲くであろう。その尽きざる快楽の欣求を秘めた肺腑を持って咲くであろう。四騎手は血に濡れた武器を隠して笑うであろう。しかし我々は、彼らの手からその武器・・・ 横光利一 「黙示のページ」
出典:青空文庫