・・・それにこの本にも例が沢山あるがね、その内でロード・ブローアムの見た幽霊などは今の話しとまるで同じ場合に属するものだ。なかなか面白い。君ブローアムは知っているだろう」「ブローアム? ブローアムたなんだい」「英国の文学者さ」「道理で・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・帝国主義的思想と共に過去に属するものであろう。 今日の世界は、私は世界的自覚の時代と考える。各国家は各自世界的使命を自覚することによって一つの世界史的世界即ち世界的世界を構成せなければならない。これが今日の歴史的課題である。第一次大戦の・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・ショーペンハウエルの説によれば、詩人と、哲学者と、天才とは、孤独であるように、宿命づけられて居るのであって、且つそれ故にこそ、彼等が人間中での貴族であり、最高の種類に属するのだそうである。 しかし孤独で居るということは、何と云っても寂し・・・ 萩原朔太郎 「僕の孤独癖について」
・・・ 深谷は、寄宿舎に属する松林の間を、忍術使いででもあるように、フワフワとしかも早く飛んでいた。 やがて、代々木の練兵場ほども広いグラウンドに出た。 これには安岡は困った。グラウンドには眼をさえぎる何物もない。曇っていて今にも降り・・・ 葉山嘉樹 「死屍を食う男」
・・・一、前条の外に、化学、天文学等、種々の科目あれども、窮理学の中に属するものなれば別に掲げず。一、学問の順序は、必ずしもこの一科を終りて次に移るにあらず、二科も三科も同時に学ぶべし。一、漢字を知らざれば、原書を訳するにも訳書をよむ・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・蕪村の用語と句法とはその意匠を現わすに最も適せるものにして、しかも自己の創体に属するもの多し。その用語の概略を言わんに漢語 は蕪村の喜んで用いたるものにして、あるいは漢語多きをもって蕪村の唯一の特色と誤認せらるるに至る。この一事がいかに・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・ 最近あらわれた元看守のファシストである暗殺者さえ、属する団体は民主化同盟という名をもっている。もういっそう手のこんでいる政治的な場面では、封建的というどんな表現さえもつかわずに、日本の封建性が旧勢力の利益のために最大限につかわれている・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・新聞紙のために古人の伝記を草するのも人の請うがままに碑文を作るのも、ここに属する。何故に現在の思量が伝記をしてジェネアロジックの方向を取らしめているかは、未だまったくみずから明かにせざるところで、上にいった自然科学の影響のごときは、少くも動・・・ 森鴎外 「なかじきり」
・・・感覚触発の対象 未来派、立体派、表現派、ダダイズム、象徴派、構成派、如実派のある一部、これらは総て自分は新感覚派に属するものとして認めている。これら新感覚派なるものの感覚を触発する対象は、勿論、行文の語彙と詩とリズムとからで・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・武田氏は景憲十一歳の時に亡んだのであるが、景憲の父の世代に属する武田の遺臣のうちには家康の旗下についたものが多く、景憲はそれらの人たちからいろいろなことを聞いたであろう。書いた時期は慶長の末ごろ、十七世紀の初めと推定せられている。 この・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫