・・・ 神 あらゆる神の属性中、最も神の為に同情するのは神には自殺の出来ないことである。 又 我我は神を罵殺する無数の理由を発見している。が、不幸にも日本人は罵殺するのに価いするほど、全能の神を信じていない・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・というような偶然的な属性を除き去っても、なおこれらのものがその芸術的価値において、没却すべからざる特質を有しているからである。このゆえに自分はひとり天主閣にとどまらず松江の市内に散在する多くの神社と梵刹とを愛するとともに(ことに月照寺におけ・・・ 芥川竜之介 「松江印象記」
・・・そうしてこれはしばしば後者の一つの属性のごとく取扱われてきたにかかわらず、近来(純粋自然主義が彼の観照の傾向は、ようやく両者の間の溝渠のついに越ゆべからざるを示している。この意味において、魚住氏の指摘はよくその時を得たものというべきである。・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・ 視覚的映画に聴覚的な音響を付加することは本質的に異なる別の次元を新たに増加することであるが、色彩の付加は単に視覚的なものの属性の補充に過ぎない。それだから、たとえば色彩再現の科学的技術がいかに発達したとしても、それがために発声映画がも・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・しかし、あのぐるりぐるりと腹を返して引っくり返る無気味さは、やはり、虎よりも鰐の属性にふさわしく思われるものである。 大蛇と鰐との闘争も珍しい見ものであるが、なにぶんにも水の飛沫がはげしくて一度見せられたくらいでは詳細な闘争方法が識別で・・・ 寺田寅彦 「映画「マルガ」に現われた動物の闘争」
・・・しかしそれだけであってこのギバの他の属性に関する記述とはなんら著しい照応を見ない。もっとも旋風は多くの場合に雷雨現象と連関して起こるから、その点で後に述べる時間分布の関係から言って多少この説に有利な点はある。しかしいわゆる光の現象やまた前述・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・それで、もしも、物や人の価値をきめる属性の数がただ一つならば、このような線の尺度が一つあれば間に合う。しかし、空間の中に静止する一点の位置を決定するだけでも三つの数字が必要である。百個の点の集団なら三百の数字が入用になる。物理的体系の「自由・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・たとえ二つのものは判別されても、二つのものの独自の属性は失われる。たとえば人間を通じて景色が見えるのでは、人間はもはや人間でなくて幽霊になってしまう。しかし音の重なる場合には二つのものはそれぞれ単独にある場合の独立性を失わない。 この事・・・ 寺田寅彦 「耳と目」
・・・が、前に述べた意識の連続以外にこんな変挺なものを建立すると、意識の連続以外に何にもないと申した言質に対して申訳が立ちませんから、残念ながらやめに致して、この傾向は意識の内容を構成している一部分すなわち属性と見做してしまいます。そうして「この・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・単にそれ自身によって理解せられるものは属性である、実体ではない。無限なる属性の基体としての神は、コンポッシブルの世界の主体、事の世界の主体でなければならない。真にそれ自身によってあり、それ自身によって理解するものは、事が事自身を限定する、純・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
出典:青空文庫