・・・この画房は椿岳の亡い後は寒月が禅を談じ俳諧に遊び泥画を描き人形を捻る工房となっていた。椿岳の伝統を破った飄逸な画を鑑賞するものは先ずこの旧棲を訪うて、画房や前栽に漾う一種異様な蕭散の気分に浸らなければその画を身読する事は出来ないが、今ではバ・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・ 二月十六日 春の日影 Feb. 23rd.巨大な砂時計の玻璃の漏斗から刻々をきざむ微かな砂粒が落るにつれ我工房の縁の辺ゆるやかに春の日かげが廻・・・ 宮本百合子 「海辺小曲(一九二三年二月――)」
・・・彼女は後二十六年の間に「マリイ・クレエルの工房」その他三巻の小説を書き、最後の作「光ほのか」を完成して一九三七年二月に南仏で歿したのであった。 マリイ・クレエルの孤児院生活の描写からはじまる「孤児マリイ」の一篇は、堀口大学氏の手に入った・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫