・・・地主の小作料の引上げや、立入禁止、又も差押えがある。労働者は、働いても食うことが出来ない。働くにも働く仕事を奪われる。小作人は、折角、耕して作った稲を差押えられる。耕す土地を奪われる。そこでストライキをやる。小作争議をやる。やらずにいられな・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・ 田と畠を頼母子講の抵当に書きこみ、或は借金のかわりに差押えられようとしていた自作農は、親爺だけじゃなかった。庄兵衛も作右衛門も、藤太郎も、村の自作農の半分はそういう、つらいやりくりであえいでいた。それが、息を吹きかえしたように助かった・・・ 黒島伝治 「浮動する地価」
・・・「あの差押えた品を渡せ」と云うや否や、押丁はおれに例の紙包みを持って来て渡した。 その時おれは気を失った。それから醒覚したのは、監獄の部屋の中であった。夜である。おれの傍には卓があって、その上に襟の包みが載っている。 明日はおれは処・・・ 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
・・・家主がマルクス一家のシーツからハンカチーフ迄差押え、子供のおもちゃから着物まで差押えたときくと、あわてた薬屋、パン屋、肉屋、牛乳屋が勘定書を持って押かけて来た。その支払いのためには残らずのベッドが売られなければならなかった。二三百人もの彌次・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
出典:青空文庫