・・・授与過剰の物議よりは、まだしも授与過少の不平の方が耳触わりの痛さにおいて多少の差等があるのである。 学位を狙う動機がたとえ私利や栄達のためであろうが、ともかくも我邦で一人でも多く学問の研究に志し従事する人が多ければそれだけ我邦の学術は発・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・媚びず怒らず詐らず、しかも鷹揚に食品定価の差等について説明する、一方ではあっさりとタオルの手落ちを謝しているようであった。 しかし悲しいことにはこのたぶん七十歳に遠くはないと思われる老人には今日が一九三五年であることの自覚が鮮明でないら・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・ 毎回の爆発でも単にその全エネルギーに差等があるばかりでなく、その爆発の型にもかなりいろいろな差別があるらしい。しかしそれが新聞に限らず世人の言葉ではみんなただの「爆発」になってしまう。言葉というものは全く調法なものであるがまた一方から・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・ この条項を備えたる人にして始めて、この条項中に差等をつける事を考えてもよいと思う。人力も人を載せる。電車も人も載せる。両者を知ったものが始めて両者の利害長短を比較するの権利を享ける。中学の課目は数においてきまっている。時間の多少は一様・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・この四つのうちに、重要の度からして差等の点数をつけて見ろと云われた時に、何人もこれをあえてする事はできないはずと思います。もしあるとすれば答案を調べずに点数をつける乱暴な教員と同じもので、言語道断の不心得であります。ただ吾は時勢の影響を受け・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・古今父母の情は一なり、其子の男子たると女子たるとに拘らず、其兄たり弟たり姉たり妹たるを問わず、之を愛するの情は正しく同一様にして兎の毛ほどの差等もなかる可し。左れば此至親至愛の子供の身の行末を思案し、兄弟姉妹の中、誰れか仕合せ能くして誰れか・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫