・・・それには、従来永年この農場の差配を担任していた監督の吉川氏が、諸君の境遇も知悉し、周囲の事情にも明らかなことですから、幾年かの間氏をわずらわして実務に当たってもらうのがいちばんいいかと私は思っています。永年の交際において、私は氏がその任務を・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・売薬や袋物を売ったり、下駄屋や差配人をして生活を営んでる傍ら小遣取りに小説を書いていたのを知っていた、今日でこそ渠等の名は幕府の御老中より高く聞えてるが其生存中は袋物屋の旦那であった、下駄屋さんであった、差配の凸凹爺であった。社会の公民とし・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・主人は近辺の差配で金も貸しているという。わたしの家をよく知っているから、五円や拾円貸さないことはあるまい。しかし何と言って借りたらいいものだろう。 すると唖々子は暫く黙考していたが、「友達が吉原から馬を引いて来た。友達がかわいそうだから・・・ 永井荷風 「梅雨晴」
・・・昨日差配人が談判に来た。内の女連はバツが悪いから留守を使って追い返した。この玄関払の使命を完うしたのがペンである。自分は嘘をつくのは嫌だ。神さまにすまない。しかし主命もだしがたしでやむをえず嘘をついた。まずたいていここら当りだろうと遠くの火・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・住宅の差配は役人ではない。住んでる連中から選出の委員制度だ。 うまい食事を ――やすくて、美味いプロレタリアの食事を―― レーニンは、婦人を台所から解放し、勉強したり、休んだりする時間を出来るだけ沢山与え、・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
出典:青空文庫