・・・これは独り女のみの問題でなく、男も、女も、一般の人間の問題だということに帰結した。 新しい理想は、男子に於ける如く、今や、女子の頭の中に燃えている。それは、決して空想でない。あるべき必然の真理として確認されている。忍従も、労働も、信念の・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・いわゆる実行的人生の理想または帰結を標榜することでないか。もしそうであるなら、私にはまだ人生観を論ずる資格はない。なぜならば、私の実行的人生に対する現下の実情は、何らの明確な理想をも帰結をも認め得ていないからである。人生の目的は何であろうか・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・作者の経験したことをみずから経験し、作者とともに推理し、共に疑問し、共に解釈し、そうして最後に結論するものがちょうど作者の結論と一致する時に、読者は作者のその著によって発表せんとした内容の真実性とその帰結の正確性とを承認するのである。すなわ・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・の廃止された事とどこかで連関していて、むしろそれの当然の帰結であるような気がする。 そうした田舎の塵塚に朽ちかかっている祖先の遺物の中から新しい生命の種子を拾い出す事が、為政者や思想家の当面の仕事ではあるまいかという気もする。・・・ 寺田寅彦 「田園雑感」
・・・ これは一見パラドクシカルに聞こえるかもしれないが、以上の理論の当然の帰結としてどうしてもやむを得ない事である。もしこれがおかしいと思われるなら、それは私の議論がおかしいのではなくて、そういう事実がおかしいのであろう。 それでもしこ・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・こうした二つのものが相接触すればいつかはけんかになる事が当然すぎるほど当然な帰結である。 それでとうとう感情の背反が起こって来た時に、これが両方とも人間であるか、あるいはいっその事両方とも象である場合にはかえって始末がいいかもしれないが・・・ 寺田寅彦 「解かれた象」
・・・ 村の社での演説の失敗は、これら数多の必要な情勢分析の不確実さから生じた当然の帰結であった。彼が戦闘的唯物論者らしく部落内の現象の分析綜合をなし得たら、「彼女の古い精神がいかに社会変革をきらっていようとも彼女のからだ――生活はこれを熾烈・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・作者としても作中の世界としてもそこに、真の思想の呼吸があり得ないことは当然な現実の帰結であった。「日蔭の村」は、やや「蒼氓」の線に近づいた傾きを示した作品であったが、ここでは、既に作者の習慣のようになった、あれこれを題材的に按配して書く・・・ 宮本百合子 「「結婚の生態」」
・・・のアリサの熱情はその不安と定着との拒絶と自ら帰結を知らない点でも、実にジイド自身のものであると云える。「神がいないのだったら何をしたってかまわない」そういう神の否定ではない。自分の、各個人の本性から尽きず湧き上る要求、モラルがある。因習に強・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・、ゲーテ、シェイクスピア、ニーチェ、あらゆる古今の天才に倣わんとするものであると云わせる彼の天才主義は、彼自身そこから超脱した生活は有り得ないことを明言している時代と歴史の歯車の間で、どのような自身の帰結を可能としていたろうか。 有島武・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫