・・・ 西洋から帰って銀座通りが狭く低く感じるのも同じような事で別に珍しい事でもないかもしれないが、ともかくも一つの世界に常住しているものが、一度そこをはなれてその外の世界を見る事無しに自分の世界を正当に認識する事のいかに困難であるかという事・・・ 寺田寅彦 「断片(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・というものが生ずる幻影はなくてむしろ常住な職業的の興味があるばかりである。 英米の新刊書を並べた露店式の台が二つ並んでいる。ここをのぞいて見ると政治、経済、社会その他あらゆる方面にわたって重大な問題を取り扱ったらしい書物が並んでいる。ロ・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・ 我々は自ら相応に鑑賞力のある文士と自任して、常住他の作物に対して、自己の正当と信ずる評価を公けにして憚らないのみか、芸術上において相互発展進歩の余地はこれより外にないとまで考えている。けれども我々の批判はあくまでも我々一家の批判である・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
出典:青空文庫