・・・お忙がしいでしょうから二十分位と断って会うときでも、やはり二、三時間も長座をするのが常例だった。 夏目さんは好く人を歓迎する人だったと思う。空トボケた態度などを人に見せる人ではなかった。それに話が非常に上手で、というのは自分も話し客にも・・・ 内田魯庵 「温情の裕かな夏目さん」
・・・二葉亭も来る度毎に必ずこの常例の釜揚を賞翫したが、一つでは足りないで二つまでペロリと平らげる事が度々であった。 二葉亭の恩師古川常一郎も交友間に聞えた食道楽であった。かつて或る暴風雨の日に俄に鰻が喰いたくなって、その頃名代の金杉の松金へ・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・けれども連中、だれも黙礼すら返さない、これが常例である。「そうですとも、考えがあるなら言ったがいいじゃアないか、加藤さん早く言いたまえ、中倉先生の御意に逆ろうては万事休すだ。」と満谷なる自分がオダテた。ケシかけた。「号外という題だ。・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・ 五 幼い Ennui 夏休み中に一度は子供等を連れて近くの海岸へ日返りの旅をするのが近年の常例になっていた。その以前には一週間くらい泊りがけで出かける事にしていたが、そうするときっときまったように誰かが転地先で病・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
出典:青空文庫