・・・ 文相既にかくの如くだから、女学校の先生たちは盛んに男女交際を鼓舞し、結婚の自由を主張し、男女の学生が自由に往来するを少しも干渉しないのみならず、教師自身が率先して種々の名目の下に青年男女を会同し、自由に野方図に狎戯け散らすのを寛大に見・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・携わっている方面も異い、気質も異っていたが、彼らは昔から親しく往来し互いの生活に干渉し合っていた。ことに大槻は作家を志望していて、茫洋とした研究に乗り出した行一になにか共通した刺激を感じるのだった。「どうだい、で、研究所の方は?」「・・・ 梶井基次郎 「雪後」
・・・ 日清戦争後三国干渉があった。「臥薪嘗胆」なるスローガンは、国内大衆の意識を次の戦争へ集中せしめた。そして、十年して日露戦争が始った。出版物のあらゆるものが圧倒的に戦争に動員された。作家も、文学もまたその例外ではあり得なかった。「戦・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・これに反して曇天では、輻射の関係で上記の原因が充分に発達しない、のみならずそれが低気圧などの近づいた場合だと、この影響として現われる風がこのような地方的の風に干渉していわゆる海陸風の純粋な発達を隠してしまう。しかし、そのような場合でも詳細に・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・俺はおまえの行末の志望については少しも干渉せぬ。附け焼刃と云うものは何にもならぬものである。何でも自分の好いた方、気に向いた事をやるが得策だ。しかし絵はそればかりを職業として、それで生活しようと云うにはあまりに不利なものである。せっかく腕は・・・ 寺田寅彦 「枯菊の影」
・・・それで、もしも鳥が反響に対して充分鋭敏な聴覚をもっているとしたら、その反響の聴覚と自分の声の聴覚との干渉によって二つの位相次第でいろいろちがった感覚を受け取ることは可能である。あるいはまた反響は自分の声と同じ音程音色をもっているから、それが・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・ 山裾の小川に沿った村落の狭い帯状の地帯だけがひどく損害を受けているのは、特別な地形地質のために生じた地震波の干渉にでもよるのか、ともかくも何か物理的にはっきりした意味のある現象であろうと思われたが、それは別問題として、丁度正にそういう・・・ 寺田寅彦 「静岡地震被害見学記」
・・・子供に勉強させるには片端から読み物に干渉して良書をなるべく見せないようにするのも一つの方法であるかもしれない。そうして読んでいけないと思う種類の書物を山積して毎日の日課として何十ページずつか読むように命令するのも一法であるかもしれない。・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・あるいは顕微鏡のデッキグラスの厚さを測微計で測らせ、また後に光学の部で再びこれを試験用平面に重ね、単色光で照らして干渉の縞を示すも有益であろう。 液体静力学の実験例えば浮秤で水や固体の比重を測る時でも、毛管現象が如何に多大の影響を有する・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・同じ面積を、時季によってちがった雑草が交代して占有する順序もおもしろく、年によって最もよく繁殖する草の種類を異にする事や、それが人間の干渉によって影響される模様や、少し立ち入って研究したら一種の「雑草学」が成り立ちそうである。それを書くとき・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
出典:青空文庫