・・・ 今日の生産拡充の要求は、これまでならばオフィス・ガールになったであろう若い婦人たちを生産面での活動に迎えると同時に、もとならば、紡績工場へ年期の前借で売られて行った村の娘たちを、機械工業に吸収して「旬日ならずして熟練工化せんとする」方・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ ある洋服屋の娘さんの書いた文章には、まだ年期の切れない弟子の一人が出征したので、その留守の間は娘さんも家業を手つだっていたところその弟子が無事帰還した。まずこれでよいと一安心する間もなく、その弟子が年期をそのまま東京へ出てしまった。そ・・・ 宮本百合子 「女の自分」
・・・それから又、年期を中途で去った弟子に対して怒る自分の心持を、仕立屋商売という立場の利害からせめてはいくらかなりともふみ出したところで見ているでしょうか、地方産業が守られる必要は当然ですが、弟子の動きをよしんばそれが間違っているにしろ若い弟子・・・ 宮本百合子 「新女性のルポルタージュより」
・・・ 紡績工場やモスリン工場へ、まだ十に手が届くか届かないような子まで、十年十五年と年期を入れて働きにやっては、いくらかの金を前借するのが、彼等の仲間にとっては、さほど恥ずべきことではない。 禰宜様宮田は、近所の誰彼が、「まあ、へえ・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・これまでは年期奉公に出されていたような若い農村の娘たちが、どんどん旋盤をつかい、電気穿孔機をつかって精密機械の製作に従うようになった。それらの機械の精巧さ、小学校を出たばかりの女の子でも使えるまで高度に調整され、単純化された分業の過程という・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・祖父は彼を靴屋の年期小僧に出した。ここでは、店の用事のほかに台所仕事に追いつかわれ、二ヵ月後、火傷のためにひまをとった。 手が癒ると、今度は製図工見習にやられたが、住込みの見習小僧の生活はここでも前同様であった。主人は少年の彼を女中代り・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・そこでは昔ながらの徒弟制度や、年期や、半封建的な青少年の労働条件が存在している。戦争が始まって、それらの小工場はみんな軍需生産の下請工場となった。急に生産を膨脹させると共に、労働の基本としたのはやはり賃銀の安い青少年労働者、そして婦人達であ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫