・・・文学字典から次の事を知りました、と親切に、その人の著作年表をくわしく書いて送って下さったが、どうも、たいしたことは無い。いっこうに聞いたことも無いような作品ばかり書いている。つまり、こういうことになります。「女の決闘」の作者、HERBERT・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・ 私はいま、自分の創作年表とでも称すべき焼け残りの薄汚い手帳のペエジを繰りながら、さまざまの回想にふける。私がはじめて東京で作品を発表した昭和八年から、二十年まで、その十二箇年間、私はあのサロンの連中とはまるっきり違った歩調であるいて来・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・ 完全な材料はなかなか急には得難いので、ここではまず最初の試みとして東京天文台編「理科年表」昭和五年版の「本邦のおもな火山」の表を採ることにする。これは現在の目的とはなんの関係なしに作られたものであるから、自分の勝手がきかないところに強・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・好事家ハ宜シク斎藤昌三氏ノ『現代日本文学大年表』ニ就イテコレヲ正シ給エトイウ。 永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
・・・は、あなたの作品年表にとって、どの時期に属すものでしょう。所謂処女作と呼ばれてよいものなのでしょうか。この作品の書かれた時から数えれば、既に二十七年間に及ぶ作家生活の閲歴が「黒い行列」の背後に横わっていることを私達は知ります。 この・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・ 次にさしずめ世界文化年表とでも称する年表が欲しい。広い文化の分野でせまい分科的にではあるかも知れないが綜合的な世界の文化を縦に貫ぬいた年表が欲しいのである。困難な仕事であろうが、文化貢献の為乗り出して下さる出版社がないものだろうか。・・・ 宮本百合子 「業者と美術家の覚醒を促す」
・・・大変面白い文化年表をつけます。前例のない試みですが、有益です。[自注10]花の散ったパリ――一九二九年のアメリカの恐慌の影響をうけたパリの生活。[自注11]二年間位の仕事――「伸子」の続篇が計画されていたが実現しなかった。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・あの作品が書かれたのは年表によって見ると日露戦争の時分であった。その頃は今日に比べると戦争と文学との関係が、一般に非常に素朴に考えられていた為に、戦争に熱した人々の心に小説の永続的な価値は考えられず、「破戒」を出版しようという書店が一つもな・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・ 更に合理性を左翼の思想と連関させて、合理性では現実の真相を理解し得ないという風に強調されているのを見ると、ピンと来るものがあって、自然著作年表を見た。するとこの作は昭和十二年一月の作である。本年の作である。本年の一月頃から日本文学の動・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ ずっとそういう心持が流れていたところこの間或る機会に、明治初年の年表を見ていたらその中に『明六雑誌』というものがあり、福沢諭吉、西周、加藤弘之、津田真道等という顔ぶれに交って祖父の名が出ていた。『明六雑誌』というものは明治七年三月に第・・・ 宮本百合子 「繻珍のズボン」
出典:青空文庫