・・・『物理年鑑』に出した論文だけでも四つでその外に学位論文をも書いた。いずれも立派なものであるが、その中の一つが相対論の元祖と称せられる「運動せる物体の電気力学」であった。ドイツの大家プランクはこの論文を見て驚いてこの無名の青年に手紙を寄せ、そ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・は婦人雑誌のためにかいた作品で、柔軟なものであるけれども、文学報国会は理由を告げず年鑑作品集に入れることを拒んだ。作品を収録するからと云って、私に送らせたのに。 わたしの母は一九三四年六月に、歿した。わたしがその年の一月から警察にとめて・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・ 一九二三年と云えば日本では、無産階級解放運動の初期で、アナーキズムとボルシェビズムとの対立の時代であった。年鑑の頁をくってみれば、この年五月にはソヴェトからヨッフェが来ている。普選で成功するために総同盟が右翼化することを決定した年でも・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・『朝日年鑑』と片山の『ドイツ文法辞典』と、『ドイツ現代短篇小説集』お送りしました。芸文書院のことはお手数すみませんでした。早速電話したところ、現在カタログはなくて、在庫品としては単語集と童話集があるだけだそうです。『毎日年鑑』はまだ出て・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 文芸家協会の年鑑は、今年私の「文学における古いもの、新しいもの」という評論をのせました。三五年度の人々の漫画を一平が描き私をも描いている。人間としての本質を把えることができず、あいまいに描いているところはかえって面白く思われました。子・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 二十五歳という年を中心にして有職者を見くらべると男二百四十万人ばかりに対して女は百五十万人ばかりであるらしいけれども、朝日年鑑は昭和十四年版も十五年版も、同じ統計を転載しているから、実際の数の上では特にこの一二年間ずっと婦人の有職者が・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・今度出版される昭和十四年度の『雑誌年鑑』の見本の一隅に、文化、文芸賞要覧というのがあって、そこを見たら帝国学士院賞や文化勲章までを入れて凡そ二十二種の賞の名が並んでいた。数の上では文運隆盛の趣を示しているかのようである。 一体、日本の現・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
小さい年表をこしらえる仕事がきっかけとなって、先頃古い出版年鑑をくりかえして見た。直接には、婦人がどんな文学的労作を出版しているかということを知りたかったのだけれども、年鑑をくってゆくうちに、様々の感想にうたれた。 大・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・ 明治十三年に神田の区会に婦人傍聴者が現れたということが神崎清氏の婦人年鑑にあって、それから明治二十三年集会結社法で婦人の政談傍聴禁止がしかれるまで、成田梅子、村上半子、景山英子らの活溌な動きがあったのだが、岸田俊子にしろ当時の自由党員・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・今日ごく手近な出版年鑑を開いて、明治初年から四分の一世紀間に亙るところを見ると、実に新聞発行の盛なのと、執筆者たちが刑罰をくって、罰金、禁獄に処せられていることのおびただしいのは誰しもびっくりするであろうと思う。それらの罪名は、殆どことごと・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫