・・・駅の横手の広っぱに井戸がある。井戸側は四角い。ふたがちゃんとついている。大きな輪があって、そこについている小さいとってで輪をまわし、繩をゆるめて水を汲みあげる仕掛になっている。シベリアの方でも田舎の井戸はこんな形だった。 日本でも女が水・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・農場の広っぱに国立出版所の赤い星で飾った売店があって、本や雑誌をうっている。 働くばかりではない。文化も高まって来るのがソヴェト同盟の農民の生活である。私は、クリミヤ地方を旅行した時見た農民のための療養院の話もした。海に、面して眺望絶佳・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
・・・――おや、あの木立もない広っぱに、大分かたまって蠢いていますね。ミーダ 目に止まらずに恐ろしいのは俺の力だ。見ろ、慌てふためいた人間どもを、火が移ったら其ぎりの小舟や橋に集めて見せるぞ。落付いて身の振方はつけさせず、類で誘ない、数で誘っ・・・ 宮本百合子 「対話」
暫く明いて居た裏の家へ到々人が来て仕舞った。 子供達の遊び場になって居る広っぱに面して建って居る家だから、別にどうと云う程の事もなさそうなものだけれ共、やっぱり有難迷惑な、聞きたくもない兄弟喧嘩の泣声をきかされたり、う・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
出典:青空文庫