・・・こんにちの文化の底辺をそこに発見しようとする切実な心がある。まして女性の現実では、――きょうでも日本のほとんどすべての女性が苦しんでいるのは、新しくなろうと願う彼女の生き生きした足や手にからんで、ひきもどそうとしている旧い力なのだから。そし・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・最も労働条件のおくれた日本の紡績産業に働く娘さんたちのもっている最低の文化的水準が、日本の民主的文化水準の底辺なのである。 人民の文学、民主的文学の課題はここから第一歩の出発をよぎなくされている。六年間の義務教育で四年の実力しかなかった・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・社会の三角の力強い底辺である人民が、どうして自分達の幸福のために努力しないでいられよう。その底辺の一番重心である青年がどんな理由があって歴史の創り手であるという光栄を捨てるべきだろう。 選挙が迫って来ている。若い人々の一票はその人々が真・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・素が、経済的文化的現実に即して観察すれば全く大衆の一員でありながら、知識人的意識とでもいうようなものの残像で観念の上では自分たちのインテリゲンツィア性を自意識しながら、実際の結果としては大衆のおくれた底辺に順応しているような現象がある。良心・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・ 日本の社会心理の最底辺にとって、戦争が投機的な災難、勝てば得する式にうけとられていることが、日本の資本主義権力にとって、どんなに便利であったかということは、日本の権力が明治二十八年以来行ったそれぞれの戦争にあたって、すべての戦争反対、・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ 風俗画としての面から今日の文学を見れば、たとえば丹羽文雄氏によって描かれている女の姿も一箇の絵図であろうし、菊池寛氏の家庭、恋愛観も常識というものの動きを除外していえば最もひろい底辺を示しているであろう。 だが、明治の初頭、『女学・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫