・・・―― ――――――――――――――――――――――――― もうかれこれ十年ばかり以前、自分がまだある府立中学の三年級にいた時の事である。自分の級に英語を教えていた、安達先生と云う若い教師が、インフルエンザから来た・・・ 芥川竜之介 「毛利先生」
・・・京都府立京都第一中学校を昨年卒業し、来年、三高文丙か、早稲田か、大阪薬専かへ行くつもりです。小説家になるつもりで、必死の勉強しています。先生、どうか私を弟子にして下さい。それには、どんな手続きが必要でしょうか。偉大なる霊魂はただ偉大なる霊魂・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ たとえば、昼間工場に働いている娘さんで、夜間女学校に来るひとの数が大変多くなっていることを、府立第六高女の校長が近頃語っていられる記事をよんだ。辛いが健気なそれらの娘たちは、夕飯をたべる間もなくやって来る。眠たい頭、つかれた体を精一杯・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
出典:青空文庫