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・・・ 謙三郎はいかんとも弁疏なすべき言を知らず、しばし沈思して頭を低れしが、叔母の背をば掻無でつつ、「可うございます。何とでもいたしてきっと逢って参りましょう。」 謂われて叔母は振仰向き、さも嬉しげに見えたるが、謙三郎の顔の色の尋常・・・
泉鏡花
「琵琶伝」
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・・・彼らは幸徳らの事に関しては自信によって涯分を尽したと弁疏するかも知れぬ。冷かな歴史の眼から見れば、彼らは無政府主義者を殺して、かえって局面開展の地を作った一種の恩人とも見られよう。吉田に対する井伊をやったつもりでいるかも知れぬ。しかしながら・・・
徳冨蘆花
「謀叛論(草稿)」