・・・と朱書きした大きな状袋から取り出して、「この契約書によると、成墾引継ぎのうえは全地積の三分の一をお礼としてあなたのほうに差し上げることになってるのですが……それがここに認めてある百二十七町四段歩なにがし……これだけの坪敷になるのだが、そ・・・ 有島武郎 「親子」
・・・そこで私の両側についてきた特高が引き継ぎをやった。「君は秋田の生れだと云ったな。僕もそうだよ。これも何んかのめぐり合せだろう。僕から云うのも変だが、何よりまア身体を丈夫にしてい給え。」 ずんぐりした方が一寸テレて、帽子の縁に手をやっ・・・ 小林多喜二 「独房」
・・・向うだって引継ぎの時にゃ、間誤つくだろうよ。ほら」 少年は通路に立っている乗客の方を、顎でしゃくって見せた。「あれが、御連中だよ」「それで何かい。その、お前は一体何をやらかしたんだね?」「何もやらかしゃしねえよ。これから・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・又、日本の従来の如く、父の没後は長子が戸主となって、事業から交際まで主となって引継ぎをしなければならないのとは異い、幾人か同胞があれば交際、事業などは各自の選択によって行っている場所では、特に長子が多分の遺産を相続する必要がありません。・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫