・・・ 私は全くへりくだった心持でいわば私たちの知らなさの程度を明らかにすることで、このリストがいつか段々補足され質を高められたものとなり、いくらか有益な読書の手引きとなって若い婦人たちがそのより年若い弟妹たちに与えるにたえるものとなることを・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 私の弟妹たちは一風も二風も其々に変って居ります。実に変っている。 太郎は今安積で、日にやけ、田舎の子と遊んで居る由、結構です。土のこわいようなものが出来上っては仕方がありませんから。少しはよその子とケンカして泣くのもよいでしょう。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・先ずわたしの弟妹からはじまって。――平和になってから三年たって、これらの婦人と子供たちの生存の問題は、それぞれに深刻である。一年二年をどうやら経て来て三年めに、のっぴきならず、さし迫った経済困難、したがって母子の全存在の不安がある。昨今人々・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・生年月日 職業 過去の健康状態 父母と弟妹の健康状態――祖父さんに性病はありませんでしたか 生物遺伝子は三代目のモルモットに最も興味がある。――然し自分は祖父の顔さえ覚えて居ない。私は手をひろげて云った。――この答えはむずかしい・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ 私は、これまで弟妹や外祖母、叔父などの死に会っていた。その経験から、この祖母の死も冷静に受けられると思っていた。年に不足はないのだし、苦痛ない往生を遂げたのだから。けれども、この予想は誤っていた。祖母の臨終の時から、一種異様な寥しさが・・・ 宮本百合子 「祖母のために」
・・・と、いい年をして弟妹どもが噪いで手をたたいた。「おそいから心配しちゃった。三重衝突でつぶされちゃったかと思ったわよ」 その辺には号外やら夕刊がとり散らされてある。どれにも、各所に籠城した罷業従業員達の動静や街上風景を写真ニュース・・・ 宮本百合子 「電車の見えない電車通り」
・・・良子嬢の父というひと、母という夫人、弟妹たちをも眺めた。かっちゃんこと良子嬢のお守代として五十円ずつ出したということの内にあらわれている下様の者とは違ったものの考えかたが、自らその家族写真を見た時も心に甦り、私はゴーゴリの小説の一頁が、生き・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・虫のよい願いかもしれないが、自分は、父母良人、弟妹と、皆、一つ心で笑い、働き、楽しみたいのである。 大晦日の晩、自分等は予定通り、吉田さんの処へ行った。人数は差程集まらなかったが、何と云っても、鍋から、おこげを分けて貰って食べた友達であ・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ この家族的な雰囲気に満ちた文集『葭の影』一巻は、私達子等をよろこばせ、尽きぬ感想の源泉となるばかりでなく、五ヵ月の相違で、母をその誕生によって悦ばすことの出来なかった太郎や未来のその弟妹たちにとっても、やがて、よき祖母からのおくりもの・・・ 宮本百合子 「葭の影にそえて」
・・・ 長太郎の願書には、自分も姉や弟妹といっしょに、父の身代わりになって死にたいと、前の願書と同じ手跡で書いてあった。 取調役は「まつ」と呼びかけた。しかしまつは呼ばれたのに気がつかなかった。いちが「お呼びになったのだよ」と言った時、ま・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫