・・・中世期の神秘主義の倫理観、古代のストアやエピクロス派の倫理観、スピノーザやショーペンハウエルの形而上学的倫理観等に触れる暇がなかった。さらに東洋の倫理観にも手が染められなかった。それは本稿の目的上、羅列を事とせずして、活きた倫理的問いを中軸・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・プラトンのように寓話的なもの、ショウペンハウエルのように形而上学的なもの、エレン・ケイのような人格主義的なもの、フロイドのように生理・心理学的なもの、スタンダールのように情緒的直観的のもの、コロンタイのように階級的社会主義的のもの、その他幾・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ニュートンがデカルト派の形而上学的宇宙観から割り出した物理学を離れて Hypotheses non fingo という立場からあのような偉業をしたのもそうである。Huyghens, Young が微粒子説を打破したのもファラデーが acti・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・例えば現代の分子説や開闢説でも古い形而上学者の頭の中に彷徨していた幻像に脈絡を通じている。ガス分子論の胚子はルクレチウスの夢みた所である。ニュートンの微粒子説は倒れたが、これに代るべき微粒子輻射は近代に生れ出た。破天荒と考えられる素量説のご・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・ここに吾人は科学と形而上学との間の際どき境界線に逢着すべし。熱力学にエントロピーの観念の導入され、またエントロピーと公算との結合を見るに至りし消息もまたここに至って自ずから首肯さるべし。 安定や公算の意味に関する議論はしばらく措き、種々・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・外国へ出てみなければ祖国の事がわからないように、あらゆる非科学ことに形而上学のようなものと対照し、また認識論というような鏡に照らして批評的に見た上でなければ科学はほんとうには「理解」されるはずがない。しかしそういう一般的な問題は別として、こ・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・というものがほかにあると考え、彼のいわゆる形而上学の重要な出発点の一つとしているようである。それらの議論はむつかしすぎて自分にはのみ込めないが、とにかくわれわれが力学や物理学で普通に用いる時の概念は空間の概念を拡張したものだという事は疑いも・・・ 寺田寅彦 「時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ」
・・・実験科学は形而上学ではない。取扱うものは自然の経験的事実である。ある時代には物理学は事柄が如何に起るかという事を論ずるのみで、何故かという事は論じないという言葉が流行して、その真の意味が誤解された事があった。今日多くの物理学者に云わせれば、・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・最善の場合において形而上学者であるが最悪の場合には妄想者であり狂者であるかもしれない。こういう人は西洋でも日本でも時々あって科学者を困らせる。しかしたいていの場合彼らの言う事は科学者の参考になるあるものを持っている。すなわち彼らはわれわれに・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
一 カント哲学以来、デカルト哲学は棄てられた。独断的、形而上学的と考えられた。哲学は批評的であり、認識論的でなければならないと考えられている。真の実在とは如何なるものかを究明して、そこからすべての問題・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
出典:青空文庫