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・・・したる亭主かな青梅に眉あつめたる美人かな旅芝居穂麦がもとの鏡立て身に入むや亡妻の櫛を閨に蹈む門前の老婆子薪貪る野分かな栗そなふ恵心の作の弥陀仏書記典主故園に遊ぶ冬至かな沙弥律師ころり/\と衾かなさゝめこと頭巾・・・
正岡子規
「俳人蕪村」
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・・・それを住持曇猛律師があけさせた。しかし今三郎が大声で、逃げた奴を出せと言うのに、本堂は戸を閉じたまま、しばらくの間ひっそりとしている。 三郎は足踏みをして、同じことを二三度繰り返した。手のもののうちから「和尚さん、どうしたのだ」と呼ぶも・・・
森鴎外
「山椒大夫」