・・・ 「だって、あっしにも分らねえおかしなもんだからちょっと後学のために。」 「ハハハ、後学のためには宜かったナ、ハハハ。」 吉は客にかまわず、舟をそっちへ持って行くと、丁度途端にその細長いものが勢よく大きく出て、吉の真向を打たんば・・・ 幸田露伴 「幻談」
・・・時々、朝ここで、おみおつけのごちそうになる事があるからな。後学のために、おたずねする。」「全部ですよ。そんなにお疑いなら、もう、うちではお客さまに、おみおつけは、お出し致しません。」「そう願いたいね。トシちゃんは?」「井戸端で足・・・ 太宰治 「眉山」
・・・そのうちにトーキーが始まるというので後学のために出かける。そうしているうちにいつのまにか一通りの新米ファンになりおおせたようである。 いちばんおもしろいものは実写ものである。こしらえたものにはやはりどこかに充実しない物足りなさがありごま・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・忙がしい余に取ってはこんな機会はまたとあるまい。後学のため話だけでも拝聴して帰ろうとようやく肚の中で決心した。見ると津田君も話の続きが話したいと云う風である。話したい、聞きたいと事がきまれば訳はない。漢水は依然として西南に流れるのが千古の法・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
出典:青空文庫