・・・これは、後段に、無花果云々の記事が見えるのに徴しても、明である。それから乗合はほかにはなかったらしい。時刻は、丁度昼であった。――筆者は本文へはいる前に、これだけの事を書いている。従ってもし読者が当時の状景を彷彿しようと思うなら、記録に残っ・・・ 芥川竜之介 「さまよえる猶太人」
・・・ 文学に於けるこの問題はいずれ後段に触れられることだと思うが、当時のこの機運は、例えば婦人作家の誕生にも影響した。それまでの婦人作家が概して有産的な環境の中から生れ出ているに対して、この時代の潮は勤労的な生活の中から婦人作家を誘い出して・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・学とそこに語られている心情は当時の全国民のものであるという断定での、貴族のエティケットが農民にまで及んでいるのが日本の性格であるというような結論は、何となく読者にうけがいがたいばかりでなく、筆者自身、後段の「日本文化の成立」の中では、そのよ・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・私はこのことをもう一度後段でとりあげたいと思うが、荷風が往年特徴としたデカダンスの張りあいない腰をおとした作家的態度を見すごすことは、何か後輩の大人らしさという風にポーズされ、この「ひかげの花」は「春琴抄」とならんで、一般文学愛好家の間にま・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫