・・・またかつて私たちの敬愛の的であった田舎親爺の大政治家レニンも、常に後輩に対し、「勉強せよ、勉強せよ、そして勉強せよ」と教えていた筈であります。教養の無いところに、真の幸福は絶対に無いと私は信じています。 私はいまジャーナリズムのヒステリ・・・ 太宰治 「返事」
・・・おそらく聡明な彼の目には、なお飽き足らない点、補充を要する点がいくらもありはしないかという事は浅学な後輩のわれわれにも想像されない事はない。 自己批評の鋭いこの人自身に不満足と感ぜらるる点があると仮定する。そしてそれらの点までもなんらの・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・それに気が附かないで独悟ったつもりになって後輩を軽蔑して居ると思わぬ不覚を取る事がないとも限らぬ。現にその選句を見ても時として極めて幼稚なる句あるいは時として月並調に近い句でさえも取ってある事がある。今少し進歩的研究的の精神が必要である。・・・ 正岡子規 「病牀苦語」
・・・それとも友達、同時代人、或は先輩後輩であろうか。 かりに、自分が当夜の主人公であり、画業何十年かの果にこういう席のわり当ての還暦の祝を催されたとしたら、私は戦慄を禁じ得なかったろうと思う。 芸術家は孤独をおそれない勇気を常にもたなけ・・・ 宮本百合子 「或る画家の祝宴」
・・・ そして、そういう現代の女性の比較的表現されていない気持は、後輩や娘たちが当事者として、異性との間に友情と恋愛の感情の区別をはっきり自覚しないでいろいろ混迷しているとおり、やはり事態に対して何となし判断の混乱におかれている場合がすくなく・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・ 太郎はまだ後輩故卓上を握ってア、ア、というだけ。 きのう二百哩ばかりドライヴをした、いろいろの話を書くのが順のようだけれども、きょうはあなたが八月二十二日に書いて下すった手紙が朝食堂のテーブルの上にのっていたので、先ずそのお礼を申・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・夏目漱石は周囲に多くの後輩の出入があった。勿論作品の発表のために尽力している。けれどもその時代のことと今日の右の事情とは、二十年の歳月が日本と私たちとを変えているように、質を変えているのである。 これらの曲折の間に、プロレタリア文学はど・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・文壇ギルドへの立ちがえりであり、先輩、後輩間の封建的な格づけに従属することであるのにおどろかされるであろうと思う。 三 現代文学は創作方法において、益々行きづまって来ていて、文壇とジャーナリズムの文学意識で・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・潜在意識の世界に文学をうちたてようとしたプルーストたちのイギリスでの後輩ヴァージニア・ウルフの生と死とは、私たちに、現代ソヴェト文学の道とプルーストの道がどこかでつながっているものとして理解しがたかった。「スクタレフスキー教授」の作者の心理・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・私はこのことをもう一度後段でとりあげたいと思うが、荷風が往年特徴としたデカダンスの張りあいない腰をおとした作家的態度を見すごすことは、何か後輩の大人らしさという風にポーズされ、この「ひかげの花」は「春琴抄」とならんで、一般文学愛好家の間にま・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫