・・・即ち、文学に従う人々の間に文学そのものの意義や価値を疑う傾向が生じており、そのことは文学を文学以外の現勢力に従属させることで、作家の日々の存在を安定せしめようとする傾向をも引き起して来ている。このことと現代のインテリゲンツィアの社会的・文化・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・もし真実の道徳再建であるならば、今日世界の到るところで、日本の人民はじめ多くの民族が植民地政策と従属的な搾取から脱しようとしてけなげに闘っている歴史的、人類的意味が正直に理解されるべきである。中国の人民が泥と血の中から立ち上って安定ある民主・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・文学は政治のあとに発生するものであるけれども、固有の狭い意味での政治と文学とは、機能のまったくちがう人間精神の二つの作業であるから、一つが一つに従属するというものではないはずである。社会にあって文学が政治とともに経済の上部構造であるにしても・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・箇性の各種の発動を自由ならしめる為の社会組織は、その物質的圧迫、或は群集の常識的低見の為に、却って伝習的形式の下に尊むべき箇性を従属せしめようと仕兼ねない価値顛倒に陥って居るのでございます。 私は勿論、前にも其と同様の心持を陳べた通り、・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・文壇ギルドへの立ちがえりであり、先輩、後輩間の封建的な格づけに従属することであるのにおどろかされるであろうと思う。 三 現代文学は創作方法において、益々行きづまって来ていて、文壇とジャーナリズムの文学意識で・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・古い純文学は、現実生活から特殊な文学的世界へ遊離してしまっていた薄弱さから旧特権とともに崩壊し、過去の大衆文学は特権者の利害のために無智におかれ従属におかれていたこれまでの民衆生活をふりすてると共に多数の人々にとって慰安のたねにもならなくな・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・の主張するところは、文学についての新しい社会的な理解が持ち来している、作品の世界観の問題、社会的効用の問題、形式が内容に対して従属的なもののように見られている点等を非難して、それらの束縛、圧迫から解放された新興の芸術派をうち立てようとすると・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・しかし、それがプロレタリアートの当面の課題を課題とし、プロレタリアートの勝利を自己の勝利と目ざして進む階級的芸術団体である以上、指導的方針はいかなる場合にもプロレタリアートの指導方針に従属するものであることは自明であって、決して同伴者的作家・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・まず過去のプロレタリア文学運動時代、サークル活動が、当時の社会状勢から経済・政治闘争に従属させられたり、それらの組織の準備的なものと考えられたりして文化・文学サークルの独自性は消滅する欠陥をしめしたことを率直に批判した。そして、サークルの独・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・そして、婦人は、世界史的に、原始の自然な女としてののびやかさを失い、家長、その父、その兄、その良人、その息子に従属する存在となり、一種の私有される家財めいた存在となったのであった。 こうして読めば、これは実に太古の社会史の一節である。人・・・ 宮本百合子 「貞操について」
出典:青空文庫