・・・これは恐しいことであると従業員は訴えているのである。 私たちは、自分の性格というものまで、今日の社会機構の不自然な分業と、その全計画に参加し得ない組織によって労力だけをしぼられているうちに、いつとなく細分され、一面化されている。現在の家・・・ 宮本百合子 「個性というもの」
・・・隣の出版従業員組合クラブからの赤旗の歌で響くこともある。 砂糖をわりながら日本女は皿洗女としゃべった。皿洗女はやせた髪の黒い女で灰色の上っぱりを着て働きながらよく唄を唄う。 ――あああ! もう直ぐいろんな実の時節だ。あなたの国で・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ 日本の民主化とともに最も積極的に従業員組合を組織し、文化的に娯楽的に優秀な映画を製作してきた東宝第一組合が「焔の男」製作企画について経営者側と対立したことは前に述べた。その後東宝経営者は、興業資本の利潤追及の方向を強化して、保守的な文・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ 斯様な条件での従業で、婦人は明らかに以前より健康を保つ多くの可能性をもつのであるから、従って、生れて来ようとする子供らの胎内での条件もより発育のために有利に変って来ているわけである。生れるという主格の受動性を示す文法上での表現は、とり・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・が、日本女はモスクワ一大きい鉄道従業員組合のクラブで、今廊下の見学してはいられないんだ。監督を見つけ出さなければならない。今夜の催しのために、彼女のところにあるのは切符ではない一枚の紙っきれで、その紙っきれは絶対にこのクラブの監督を必要とす・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・エロ・グロ、剣劇の興行政策をこれまで日本で最もいい制作をしていた東宝にもちこんで、近代的な社会感覚をもっている従業員たちを追いはらっている渡辺銕蔵が、教員の資格審査委員の一人であるという事実は、見のがされてはならない。手のこんだ日本の民主化・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・立ち話をしている黒外套の従業員の前や後を、郊外電車から吐き出された人々が通る。ひょっと、その群集の中に、はる子は千鶴子らしい若い女を認めた。こちらからはる子が進んで行く、二間半ばかり前面を横切って省線のステイションの方へ行く。横顔が確に千鶴・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・ 死の過程がどうであったにしろ、下山氏の死の本質は政治屋でなかった同氏が、十六万人の従業員ともども、吉田政府の犠牲となったといえるものである。 各新聞を注意ぶかく読んでいる人は、誰しも心づいたことだろう。下山氏の死亡、その人間として・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・の一ばん大きいのは鉄道従業員のクラブで、印刷労働者のも大きい。映写室でも大きいのになると、千人も入れるのがある。「クラブ」では、自分等で詩や小説を作り、芝居をやっているが、まだ自分等で映画を作るまでには至っていない。これはただ経済的の理・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの「労働者クラブ」」
・・・ 一般に官業だから政府のつぶれぬうちは従業員の生活は保証されていると考えている。十五ヵ年間以上つとめると一時金なら二千円以上 年金なら一時千円で以下毎年金が下りるので、おとなしい専一。 娯楽設備一年二回観劇。改造さえよめぬ。・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
出典:青空文庫