・・・あなたについて歩いたって、なんの得するところも無いということを知っています。それでいながら、私はあなたから離れることが出来ません。どうしたのでしょう。あなたが此の世にいなくなったら、私もすぐに死にます。生きていることが出来ません。私には、い・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・このうちから東洋にのみあって、西洋の美術には見出し得べからざる特長を観得する事が出来るならば、たといその特長が全体にわたらざる一種の風致にせよ、観得し得ただけそれだけその人の過去を偉大ならしむる訳である。従ってその人の将来をそれだけインスパ・・・ 夏目漱石 「『東洋美術図譜』」
・・・ 日本の社会心理の最底辺にとって、戦争が投機的な災難、勝てば得する式にうけとられていることが、日本の資本主義権力にとって、どんなに便利であったかということは、日本の権力が明治二十八年以来行ったそれぞれの戦争にあたって、すべての戦争反対、・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・小学校の六年生ぐらいの女の子が突然群集の中から大きい四辺かまわない声を出して、「満州をとっちゃうと、もっと金や何かとれて得するねエ」と云うと、一緒に見ていた若い学生がさすがにきまりわるそうな小声で、「とるんじゃないよ」と云っ・・・ 宮本百合子 「「モダン猿蟹合戦」」
出典:青空文庫