・・・「言って置くけれども、御託宣と、警句と、冗談と、それから、そのにやにや笑いだけはよしにしましょう」「それじゃ、君に聞くが、君はなんだって僕を呼んだのだ」「おめえはいつでも呼べば必ず来るのかね?」「まあ、そうだ。そうしなければ・・・ 太宰治 「ダス・ゲマイネ」
・・・眉山みずからの御託宣ですか?」「そうですとも。その貴族の一件でね、あいつ大失敗をやらかしてね、誰かが、あいつをだまして、ほんものの貴婦人は、おしっこをする時、しゃがまないものだと教えたのですね、すると、あの馬鹿が、こっそり御不浄でためし・・・ 太宰治 「眉山」
・・・ 立川で降りて、彼のアパートに到る途中に於いても、彼のそのような愚劣極まる御託宣をさんざん聞かされ、「ここです、どうぞ。」 と、竹藪にかこまれ、荒廃した病院のような感じの彼のアパートに導かれた時には、すでにあたりが薄暗くなり、寒・・・ 太宰治 「女神」
・・・文吉が沙に額を埋めて拝みながら待っていると、これも思ったより早く、神主が出て御託宣を取り次いだ。「初の尋人は春頃から東国の繁華な土地にいる。後の尋人の事は御託宣が無い」と云った。 文吉は玉造から急いで帰って、御託宣を九郎右衛門に話した。・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・お梅さんが床の間の前に据わって、富田に馳走をせいと儼然として御託宣があるのだ。そうすると山海の美味が前に並ぶのだ。」「分からないね。箕村というのは誰だい。それにお梅さんという人はどうしてそんなに息張っているのだい。」「そりゃ息張って・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫